BigQueryの導入事例から学ぶデータ活用最新情報【不動産業界編】

昨今、様々な業界でDX化を推し進める動きが活発化していますが、不動産業界においてもデータの活用をより一層強化しようとする企業が急増しています。

この変革の中心には、ビッグデータの分析と活用があります。市場の変動を読み解き、顧客のニーズに応えるためには、膨大な量のデータを迅速かつ正確に処理することが求められています。こうした要求に応えるため、Google CloudのBigQueryが不動産業界で注目を集めています。

この記事では、BigQueryをどのようにして不動産業界で活用できるのか、その具体的なメリットと実際の導入事例を紹介します。

目次

不動産業界でのデータ活用にBigQueryが適している理由

不動産業界におけるデータの活用は、単に大量の情報を処理するだけでなく、その情報から意味のある洞察を引き出すことが求められます。

ここでBigQueryが重要な役割を果たします。理由は以下の通りです。

高度なスケーラビリティと柔軟性

BigQueryは、データの量が増加してもその処理能力を維持します。不動産市場には常に新しいデータが流入し、その量は日々増大しています。BigQueryは、このような大量データに対しても柔軟に対応できるため、不動産業界でのデータ分析に適しています。

リアルタイム分析の可能性

不動産市場は常に変動しており、最新の情報を基に迅速な意思決定を行うことが重要です。BigQueryは高速でデータを処理し、リアルタイムに近い分析を実現します。これにより、不動産会社は市場の変化に素早く対応することができます。

高いコスト効率

ビッグデータの分析には通常、高額なコストが伴いますが、BigQueryは従量課金制を採用しており、必要な分だけのリソースを利用することができます。これにより、不動産会社はコストを抑えながら効率的にデータ分析を行うことが可能です。

これらの理由から、BigQueryは不動産業界のデータ活用に適したツールであると言えます。次に、BigQueryが不動産業界にもたらす具体的なメリットについて詳しく見ていきましょう。

BigQueryが不動産業界にもたらすもの

BigQueryの導入は、不動産業界において次のような具体的なメリットをもたらします。

市場動向の詳細な分析と予測

BigQueryを活用することで、不動産市場の価格動向、需要の変化、地域別の成長率などの詳細な分析が可能になります。また、経済指標や人口統計データと組み合わせることで、将来の市場動向をより正確に予測することができます。これにより、不動産企業は投資戦略や開発計画をデータに基づいて最適化することが可能です。

顧客の行動分析に基づくパーソナライズドな物件提案

顧客の過去の購入履歴、物件検索行動、好みといったデータを分析することで、個々の顧客に合わせた物件を推薦できます。BigQueryによる深いデータ洞察は、顧客のニーズをより正確に捉え、満足度の高い提案へとつながります。

運用効率の向上とコスト削減

不動産業界では、物件の管理や取引プロセスに関連する多くのデータが存在します。BigQueryを使用することで、これらのデータを迅速かつ効率的に処理し、運用コストの削減を実現できます。さらに、データ駆動型の意思決定により、リソースの無駄遣いを減らし、全体のビジネス効率を向上させます。

これらのメリットは、不動産市場において急速に進化し続けるデータ分析の需要に応え、不動産企業の競争力を高める重要な要素です。次に、これらのメリットが実際のビジネスでどのように実現されているか、具体的な導入事例を通して探ります。

BigQueryによるデータ活用事例(不動産業界編)

ここまで不動産業界がBigQueryを導入すると何ができるかを中心にお伝えしてきました。

次は、BigQueryがどのように不動産企業に利用され、どのような効果をもたらしているのかを、実際の企業事例を通じて見ていきましょう。

導入事例①:株式会社オープンハウス

画像引用:https://oh.openhouse-group.com/

オープンハウスは、日本の不動産業界における先進的な企業で、革新的なデータ活用で市場に注目されています。

オープンハウスでは、BigQueryをデータ分析基盤の核として活用し、日常のトランザクションデータから広告、ウェブ履歴、地理情報など多岐にわたるデータを統合しています。これにより、ビジネスの評価が精緻化され、マーケティングの成果を具体的な数値で把握することが可能になりました。

特に、ウェブ集客の分析では、Google アナリティクス 360 のデータをBigQueryに転送し、広告データや顧客契約実績データと組み合わせており、これにより、機械学習モデルを用いた広告キャンペーンの評価が行え、実際の契約につながったかどうかを評価できるようになっています。

さらに、物件の位置や営業ルートの確認には地理情報システム(GIS)が用いられています。BigQuery GISの導入により、以前は時間がかかりすぎていた処理が大幅に速くなり、顧客のニーズに沿った物件提案が迅速に行えるようになりました。

また、オープンハウスでは情報システム部門による積極的な効率化が社内活性化につながっています。

従来アナログとされてきた不動産業界において、IT化を積極的に進めることで、業務効率化が大きく進んでおり、年間約42,000時間の工数削減が見込まれています。これは社内システムやアプリ開発の内製化によるもので、今後もGoogle Cloudの連携機能を活用して、全社的なデータ分析基盤のさらなる強化を目指しています。

導入事例②:LIFULL HOME’S(株式会社LIFULL)

画像引用:https://www.homes.co.jp/

LIFULL HOME’Sは、日本で広く知られる不動産情報サービスを提供する企業です。

LIFULL HOME’Sは、ユーザー一人ひとりの好みに合わせた物件を推薦する革新的なレコメンドシステムをBigQueryを用いて実現しました。このシステムは、似たお気に入りの傾向を持つユーザー同士を結びつけ、それぞれに最適な物件を提案します。

住まい探しにおいて、多くのユーザーは検索条件をどのように設定すれば良いか分からず、適切な物件を見つけることに苦労しています。このような背景があり、LIFULL HOME’Sは、ユーザーにもっとパーソナライズされた体験を提供するためのプロジェクトが立ち上がりました。

このシステムの構築には、ユーザーのお気に入りデータ収集、レコメンドエンジンの開発、そしてアプリケーションへの組み込みが含まれていました。特に、Firebase Analyticsを介してBigQueryに収集されたデータを活用し、BigQuery MLを使用して協調フィルタリングを行うことで、ユーザーの好みを正確に捉えるレコメンドが可能になりました。

LIFULL HOME’Sのこの取り組みは、BigQueryの高い柔軟性とGoogle Cloud Platformとの優れた相性を活かしたもので、効率的かつコスト効果の高い方法でユーザー中心のサービスを提供する新しいモデルを示しています。

導入事例③:三井ホーム

画像引用:https://www.mitsuihome.co.jp/

三井ホームは、不動産業界の革新者として、住宅建築から不動産開発まで幅広いサービスを展開しています。

三井ホームの目標は、データを活用して顧客に更なる価値を提供すること。長年にわたる経験と知識に加え、BigQueryを導入したことで、データ分析のプロセスを大幅に効率化しました。これにより、過去には個別で行っていたアンケートの分析を横断的に行い、顧客満足度の向上につながっています。

特に、BigQueryの導入は、データ収集の自動化とダッシュボードの表示速度向上に貢献しました。データの統合と加工の際に、Cloud Data FusionやCloud Functionsを利用することで、手動作業を削減し、データ分析の迅速化を実現。

これにより、拠点ごとの独自の集計方法から脱却し、共通の指標を用いた分析が可能になりました。また、データ分析の速度が向上し、リアルタイムでの業務改善を実現しています。

さらに、顧客からのアンケートを横断的に分析し、感情分析を行うことで、顧客の声をより深く理解。SDGsの取り組みとして、国産材の利用率やZEH率等もリアルタイムでダッシュボード化し、環境面での貢献を可視化しています。

三井ホームは、今後もBigQueryを活用し、AI/ML技術を駆使して、顧客の好みやニーズを定量的に掴むことで、商品マッチングの質を更に高めていく計画です。BigQueryの導入は、お客様に喜びと価値を届けるための最新テクノロジーの積極的な活用を示しています。

まとめ

この記事では、不動産業界におけるBigQueryの具体的な導入事例を紹介しました。

オープンハウス、LIFULL HOME’S、三井ホームの事例を通じて、BigQueryが不動産業界においてどのように価値を提供し、業務の効率化、顧客満足度の向上に貢献しているのか、そしてデータ駆動型の意思決定を促進するかを見てきました。

本記事をBigQuery導入検討のきっかけにしていただけますと幸いです。

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